逮捕状で逮捕する「通常逮捕」の要件について初心者向けに解説

役立つ法律知識
かるなだ
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法律系の仕事をしている「かるなだ」です。
罪を犯してしまった人、その家族や知人に対して、有意義な情報を提供していきます。

この記事が参考になる方
  • 罪を犯してしまった人
  • 逮捕されるおそれのある人
  • 一度逮捕された後、釈放されて、まだ処分が決まっていない人
  • 逮捕されてしまった人の家族や知人

今回は、逮捕種別の中でも、最も逮捕件数の多い通常逮捕について解説します。

「えっ?逮捕種別って何?通常逮捕?」って思った方は、逮捕種別をまとめた記事があるので、読んでみると、この後の説明がよくわかると思います。

この記事でもっとも伝えたいことは、通常逮捕で逮捕されたときに、

  • 警察の逮捕理由などが、ちゃんと明確にされているか
  • 事実と違う内容で逮捕されてないか

をしっかりと確認して、もし事実と違うことがあるのであれば、「しっかりと主張することが大切だ」ということです。

犯罪者を庇う意図での記事ではないので、誤解しないようお願いします。

通常逮捕とは、どんな逮捕なのか

手錠

まず、簡単に説明すると、通常逮捕とは、

  1. 犯人に逮捕状を見せて、
  2. 逮捕状に書いてある内容を確認させて、
  3. 逮捕する

ことです。

犯罪の捜査は、基本的な手続きが刑事訴訟法(刑訴法)という法律で定められています。
通常逮捕については、刑訴法199条に書かれています。

第199条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。(以下省略)

刑事訴訟法
かるなだ
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法律用語って、本当に難しいですよね。

できるだけかみ砕いて説明しますね。

まず、用語の説明をしておきます。
野球をやるのに「ストライク」とか「ホームラン」という言葉を知っておく必要があるように、法律についても、最低限の独特の用語を知っておいた方がいいです。

用語解説

検察官、検察事務官又は司法警察職員
⇒ 警察などの捜査する組織の職員です。まとめて「警察官」だと思っていて大丈夫です。

被疑者
⇒ 犯人のことです。他にも「容疑者」なんて呼ばれることがあります。

つまり、犯人が、犯罪を行ったということが、私たちのような普通の人でも納得できる程度の理由がある場合、裁判官に逮捕状を請求し、その逮捕状を根拠として逮捕するのが通常逮捕です。

かるなだ
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例えば、傷害事件で使われた凶器に残された指紋から判明した犯人の顔と、防犯カメラの犯人の顔が一致した場合です。

この場合、指紋の男が犯人だと納得できますよね。

この程度の理由が、必要だということです。

「警察24時」などのテレビ番組で、捜査員が張り込みをしていて、出てきた犯人に声を掛けて、逮捕状を示して逮捕する場面があります。
それがこの通常逮捕です。

憲法33条は、「逮捕における令状主義」を定めており、「令状による逮捕」を原則としています。
この通常逮捕は、まさに憲法33条の要請を受けた逮捕種別ということになります。

第3条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

日本国憲法

通常逮捕の要件とは

チェックリスト

ここで大切なのは、どんな犯罪者であっても通常逮捕できるというわけではありません

通常逮捕するためには、

  • 逮捕の理由
  • 逮捕の必要性

両方がないと、裁判官から逮捕状が出ません。
つまり、裁判官から「逮捕していいですよ。」という許可が下りないということです。

それぞれの条件について個別に説明します。

逮捕の理由

理由もなく逮捕されるなんて、独裁国家の弾圧と同じになってしまいます。
逮捕するためには、理由が必要なことは当然ですよね。

逮捕の理由とは、刑訴法で定められていた「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のことです。

これもまた、パッと読んだだけでは理解しにくい文章ですよね。

「被疑者が罪を犯したこと」と「相当な理由」の部分に分解して解説します。

「被疑者が罪を犯したこと」

特定の者が、逮捕しなければいけない犯人だとしたら、当然、その者が犯罪者であるという疑いがなければいけません

しかも、「何の罪かは、わからないけれど、悪いことをした」という程度では不十分です。

「被疑者が罪を犯したこと」と言えるためには、

  • 特定の犯罪として、法律に反する行為であること
    例:人を殺した、お店のものを盗んだ 等
  • 犯人と被害者が特定されていること
    例:犯人は○○で、殺されたのは○○に住む○○さん(○歳) 等
  • 犯罪の日時・場所・方法などが特定されていること
    例:令和3年○月○日午後○時○分ころ、東京都○○で、包丁で・・・ 等

が明らかにされている必要があります。

かるなだ
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逮捕するということは、その人の自由を奪うことですので、どんな犯罪をしたから逮捕するのかをはっきりさせる必要があるんですね。

「相当な理由」

相当な理由というのは、ざっくりいうと、「証拠がありますよ」ということです。

ここでいう証拠には、

  • 目撃者の供述
  • 防犯カメラの映像
  • 逃走するときに使った車の所有者 等

が、犯罪の状況と一致していることを指します。

犯罪が発生したのであれば、その行為が犯罪として成立することと、その行為と逮捕する者に関連性があるということを証明しなければいけないのです。

逮捕の必要性とは

逮捕の必要性については、法律で直接規定されているわけではありませんが、罪証隠滅」又は「逃亡」のおそれがある場合は、必要性があると判断されます。

罪証隠滅

証拠隠滅

法律上の用語では、「罪証隠滅」と言いますが、一般的には「証拠隠滅」と同じと考えて大丈夫です。

たとえば、殺人犯が

  • 凶器に使った包丁を見つからないように埋めること
  • 首を絞めたロープをごみと一緒に捨てること

のように、証拠品を直接処分することだけでなく、

  • 犯行を目的していた人に口封じするすること
  • 共犯者と口裏合わせをする など

の物だけでなく、犯罪の証拠となるようなものすべてを指します。

こういった行為が行われる可能性があるのであれば、「罪証隠滅」の可能性があると言えます。

逃亡

逃亡者

「逃亡」とは、その場から逃げていなくなる「逃走」とは違います。

逃亡とは、犯人が雲隠れすることを言います。
つまり、「家から忽然と姿を消して、それ以降、連絡が取れなくなる」といったケースが考えられます。

かるなだ
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私も大好きなテレビ番組の「逃走中」。

あれは、雲隠れせず、逃げ回っているだけなので、「逃走」という言葉がぴったりです。

逃亡のおそれがあると言えるためには、

  • 事件の性質(捕まったら当分刑務所に入ることになってしまう など)
  • 家族構成(独り身で、自分の判断だけで引っ越し、家出ができる など)
  • 職業(定職についてないので、いつでも逃げられる など)
  • 年齢や体調(高齢で定期的に通院しなければいけないので、逃げ回れない など)
  • 犯罪の経歴(執行猶予中なので、今回有罪になると刑務所にいくことになる など)

などの、いくつもの要因から判断します。

まとめ

犯人を逮捕するため、裁判官からの逮捕状によって通常逮捕するためには、「逮捕の要件」と「逮捕の必要性」が必要です。

通常逮捕された場合、基本的にはこれら2つの条件を満たしていると判断されたということです。

しかし、逮捕された後、「これらの条件の理由では十分でないと」いう理由で釈放されることもあります。

逮捕されてしまったからといって、絶望するのではなく、警察による逮捕のための主張と違う点があるのであれば、しっかりと主張することが大切です。



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